2016年 教育環境の整備のさらなる充実を求める要請/18歳選挙権にかかる高校生の政治活動にかんする要請
日本共産党山形県議団は、このほど以下2件の申し入れを吉村知事と菅野教育長に行いました。
2016年3月17日
山形県知事 吉村美栄子 様
山形県教育委員会教育長 菅野滋 様
日本共産党山形県議団
県議会議員 渡辺ゆり子
県議会議員 関 徹
教育環境の整備のさらなる充実を求める要請
県民のいのちと暮らしを守る県政への尽力に敬意を表します。
昨年9月、山形県教育総合会議で「確かな学力の育成について」の協議がなされ、会議では「平成 27 年度全国学力・学習状況調査」結果の推移が示されました。示された表は一見すると学力の低下傾向とも読み取れるものとなっています。
しかし、そもそも文科省自身も調査は「学力の一側面」としています。このような全国比較とその公表は、更なる競争主義的な環境を生み、教育現場にテスト点数至上主義が持ち込まれ、「テストの点数が悪い子は学校に行けない」雰囲気を生み出しかねません。
ただでさえ、日本の教育については、国連子どもの権利委員会から「過度な競争主義的な環境がいじめ、自殺に寄与の懸念」するとの3度の勧告がなされており、これ以上の競争主義の持ち込みは、許されません。
現場の教員からは「上から過去問やれと言われる」「25分の過去問で実質授業が一コマつぶれている」との声も上がっています。仮にテストの点が上がっても、他の課題がおろそかになっては、本当の学力を育てることはでないのではないでしょうか。全国学力テストは、中止すべきです。県学力テストも行われるべきではありません。
文部科学省の2013年度「全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(お茶の水大学への調査委託)によると、「親の収入」や親の学歴など学力との相関が指摘されています。
リーマンショックは、県の若い世代の派遣ぎりなど県経済に大きな影響をもたらしました。子育て世代の雇用者の所得階層がより低位に推移、県の大学等進学率も2009年を境に伸び悩み、東京との差も開きつつあります。年々増加する大学学費や下宿代などの負担から進学をあきらめる生徒が生まれています。教育現場からは「勉強を始めようと思っても、えんぴつ削っていない。消しゴムがないというところから始めないといけない子もいた」との話や、母親が仕事で忙しいため、朝食にパンを出したら、子どもが「こんなの朝食じゃない。学校に行かない」と騒ぎになったとの話も聞かれます。
また、教育環境の要となる先生たちの置かれている状況は、“多忙化”が深刻です。県の勤務実態調査でも時間外勤務が過去最大となっています。小学校では「子どもの声をじっくり聴いてあげる時間がない」「対応を教頭先生に頼もうとしても、授業を持っていて誰も頼めない」などの苦悩の声が出ています。中学校では部活が終わった後の学年会あるなど長時間労働となり、過労に陥っている先生も少なくありません。
今回の少人数学級編制「さんさんプラン」の一部改定では、これまで非常勤とはいえ授業を受け持ち、子どもたちと向き合っていた教員が、OJTとして先生への指導に変更されています。
テスト対策で子どもたちを煽るのではなく、教員が子ども達の声に耳を傾け、授業のための十分な準備を行える環境整備や、子どもたちがお金の心配なく学べる環境整備を行ってこそ、子ども達に本当に豊かな学力、人格を育むことができるのではないでしょうか。この方向こそが子どもの権利条約の趣旨にそうものと考えます。
以上の趣旨から教育環境の整備のさらなる充実を求めます。
- 県教育委員会として、リーマンショック以降の家庭状況の変化を認識し対応した施策の推進をはかること。子どもの貧困対策の強化を行うこと。
- 県教育委員会の予算を大幅に増額し、少人数学級編制「さんさんプラン」の充実を行うこと。
- 県教育委員会会議で、学校や教育委員会に寄せられた意見を紹介したり、アンケート調査の実施、公聴会や意見交換の開催、所管施設の訪問等など積極的に行い公表すること。
- 教育委員、教育長、教育委員会事務局が子どもの権利条約について研究し、条約の趣旨にそった施策の推進を図ること。
以上
2016年3月17日
山形県教育委員会教育長 菅野滋 様
日本共産党山形県議団
県議会議員 渡辺ゆり子
県議会議員 関 徹
18歳選挙権にかかる高校生の政治活動にかんする要請
県民のいのちと暮らしを守る県政への尽力に敬意を表します。
文部科学省は昨年、18歳選挙権の実施に向けて、高校生の政治的活動を「生徒の政治的活動は望ましくない」として全面禁止してきた1969年の通知を廃止しました。憲法や子どもの権利条約で保障された「表現の自由」「意見表明権」などの権利をじゅうりんするものであり、廃止は当然です。
文科省は、今回新たな通知発表しました。その中でも「今回の法改正により、18歳以上の高等学校等の生徒は、有権者として選挙権を有し、また、選挙運動を行うことなどが認められることとなる。…今後は、高等学校等の生徒が、国家・社会の形成に主体的に参画していくこと」を期待されるとされ、高校生といえども政治的活動の自由は、日本国憲法によって保障されています。
一方、新通知では、全面禁止は見直したものの、禁止・制限を強調する内容となっています。高校生の政治的活動にかんして「無制限に認められるものではなく、必要かつ合理的な範囲内で制約を受ける」としています。放課後や休日であっても構内での選挙運動や政治活動は制限・禁止する。授業や生徒会活動、部活動を利用して選挙運動や政治活動を行うことは禁止、―としました。学校外で行う政治的活動について、「学業や生活に支障がある」「生徒間に政治的対立が生じる」など学校教育に支障がある場合は「禁止も含め指導する」としています。教員については、「個人的な主義主張を述べることは避け、公正かつ中立な立場で生徒を指導する」とし、政治に関する教育については文科省が作成する副教材を使用し、模擬選挙など実践的に行うよう求めました。
これでは、「自粛」が横行し、政治問題を考えたり、議論することも抑圧になってしまいます。国は1969年、高校生の政治的活動を全面禁止する通知を出し、高校生の政治的無関心を広げました。「あれもだめこれもだめ」と抑圧するのでは、教育現場に委縮をもたらし、18歳選挙権を機に再び政治的無関心を広げかねません。教育の条理に基づき教職員の教育活動の自由が保障されるべきです。以憲法と子供の権利条約の趣旨に則り、政治活動の自由の侵害にあたることは一切おこなわないこと。
校則による政治活動届け出は、山形県個人情報保護条例5条3項(センシティブ情報の収集の制限)に抵触する恐れがあるため行わないこと。
以上