2018年 2月定例会と2018年度県当初予算についての見解

2018年3月16日

日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関  徹

 2018年度山形県当初予算案等が可決・成立しました。全会一致の可決ですが、全員賛成の場合は討論を行うことができないルールでも、会派として県民に対する責任を果たす立場から、2018年度山形県一般会計予算(当初予算)等について見解を表明します。

1)2018年度山形県当初予算は、国の安倍晋三政権の社会保障予算で「自然増」分抑制を受け、介護サービス利用者負担は2割から3割への拡大、70歳以上の患者負担限度額の引き上げ、後期高齢者医療保険料の低所得者特例軽減の縮小、国民健康保険の都道府県化、生活保護の生活扶助引き下げ等で、格差と貧困の拡大に拍車をかける施策が進められようとしています。競争主義に拍車をかけている全国一斉学力テストも引き続き実施されようとしています。また、県予算には含まれませんが、農業分野では2018年度からコメの直接支払い交付金が廃止され、2016年県分支払い実績で37.7億円の消滅が農家経営に与える影響は甚大です。

2)そのような国政の動向のもとで当初予算には、懸念される事業があります。教育分野では、過度な競争と教員の多忙化を助長しかねない県単独の山形県学力等調査の実施、教育の民間活力の導入で高校施設整備にPFI手法の導入検討、中学の受験競争・受験対策の過熱化をもたらしかねない田川地区の中高一貫校推進(鶴岡市)を初め、様々な意見や反対の声が強い田川地区高校の再編整備、起業家精神の基盤となるようなマインドを推進する子どもベンチャーマインド育成事業費、県立図書館の図書費の縮減などです。
 商工分野では、有機エレクトロニクス関連企業の県内進出に関連し、国の地域総合整備資金を活用して企業に50億円の貸し付けを予定しています。企業誘致は否定するものではありませんが、そもそも有機エレクトロニクスバレー構想おいて県が当初試算した経済波及効果で2009年度に地方税収7億~10億円、1400人の雇用との見込みが大幅に遅れるなかで多額の貸付・支援の妥当性は定かではありません。
 介護では自立支援型地域ケア会議の促進でサービスの打ち切りが促進される恐れがあります。医療分野では、地域医療構想に基づいて県立中央病院50床、河北病院24床の病床削減を行なわれます。
 奥羽・羽越新幹線整備事業では、並行在来線の存廃、建設費用とその負担、環境への影響、既存交通インフラとの関係など様々な課題について、県民に情報を提供しながら検討する必要があります。
 他に未収金回収の民間委託の開始で生活相談の機能が失われないかなどの懸念もあります。最上小国川流水型ダム・常勤の中国帰国者支援員ポスト削減には反対で、議員を含む特別職の報酬引き上げには本会議で反対討論を行いました。

3)一方で、県予算には、安倍政権の社会保障切捨て、大企業優遇、軍拡の国予算から県民生活を守るために、県民と共産党県議団が要求してきた各事業が盛り込まれ、吉村県政の前向きな政治姿勢である「子育て支援充実」「いのちと暮らしを守る」「貧困をストップする」「情報公開の推進」などが事業に具現化されています。
 具体的には、住宅リフォーム助成制度・正社員化支援、学童保育利用料軽減支援の継続、私立高等学校等授業料の軽減の拡充、待機児童解消対策の拡充、子どもの貧困の実態調査(新規)、児童養護施設入所者等への私学入学金・車の免許費用の拡充、ひきこもりなど若者等の実態調査の実施(新規) 、医師修学資金の貸付の拡充、介護休業代替職員確保の支援(東北初・新規)、中小企業トータルサポート事業の中でも特に小規模事業者へ事業助成の拡充、減反制度が廃止される中での中小稲作農家支援事業(県単新規)、子育て世代・高齢者の住宅要求に資するセーフティネット住宅供給促進事業(新規)、教員の多忙化に目を向けた学校に事務スタッフや部活動指導員の配置(新規)など、各事業の拡充額は大きくはないものの県民の暮らし福祉・教育に資するもので、特に県内での人手不足が深刻化するなか、県は「都市部と地方の所得格差の拡大が人口流出を招いている」と訴え、国に小規模事業者支援とあせた最低賃金の「ランク制度の見直し」や「全国一律の適用」を提案し、当初予算では、課題はあるものの県独自に最低賃金を一定額引き上げた小規模事業者への奨励金事業に着手しました。高く評価できるものと考えます。

4)以上のように、吉村県政の「県民の命と暮らしを守る」姿勢に沿った前向きの施策を評価し、総合的に判断して2018年度山形県一般会計予算に賛成しました。

5) 県議会議員の海外行政視察は、全国的に監査請求・裁判や住民の批判にさらされています。山形県議会も2010年から中止し、県議団としては議会に制度の廃止を求めてきました。しかし、3月15日の議会運営委員会で次期改選時から制度を一部改変し、再開を決めてしまいました。
 県議団として、委員会に出席し異議を申し立てるため番外発言を求めましたが、委員会として発言を認めず再開を決めてしまいました。引き続き廃止を求めます。

6)引き続き県民の暮らし福祉優先・教育の充実の立場で、知事の前向きな姿勢の発展を目指し、議会のチェック機能と政策提言の役割を果たすため全力を挙げる決意です。

7)また、副議長選挙が行われましたが、通常、副議長は第2会派から選ばれることが適当と考え、党議員団は石黒覚議員に投票しました。

以上

前向きな事業

情報公開検証推進事業費 568 【新規】

「情報公開・提供の検証、見直し第三者委員会」の 運営

私立高等学校等授業料軽減事業関係 2,089,104千円
  • 保護者の教育費負担軽減
    • 新たに市町村民税所得割額92,700円以上154,500円 未満(世帯収入約450~590万円)の世帯について、 就学支援金と合わせて月額17,350円までの補助(月 額2,500円上乗せ)を実施【拡充】
    • 奨学のための非課税世帯の給付金を増額【拡充】
エネルギー地産地消 モデル推進事業費 21,301千円 【新規】
  • 県内電力小売事業者の地産地消モデル事業 (地域等の再エネ電力供給、ICT活用省エネ サービス提供)に対する助成
待機児童解消に向けた取組み強化【拡充】 86,161千円
  • 保育施設整備の加速化(低年齢児受入加速化事業費)
    1. 届出保育施設の認可化移行促進 21,000千円
      • (事業主負担を軽減 1/4 → 1/6)
    2. 認可保育施設の低年齢児受け入れ拡大 17,208千円
子どもの貧困の実態調査【新規】 3,051千円
放課後児童クラブを兄弟姉妹で同時利用している世帯に対する利用料軽減への助成【拡充】
  • 対象市町村23→27が広がるため予算拡充 
児童養護施設の入所者等の進学及び就職の機会確保のための私立高校入学時納付金や運転免許取得費等の助成【拡充】
障がい者の工賃向上【拡充】
ひきこもりなど社会参加に困難を有する若者等の実態調査【新規】
医師修学資金の貸付【拡充】 228,829千円
  • 新規貸与29名、継続貸与84名、年200万円の貸付
介護離職ゼロに向けた意識改革や介護休業代替職員確保への支援【東北初】【新規】 8,130千円
業務改善奨励金 10,200千円
  • 生産性向上に資する設備投資等を行い最低賃金を一定額 以上引き上げた中小企業・小規模事業者への奨励金の支給
小規模事業者持続的発展支援事業 60,000千円
  • 小規模事業者の経営計画に基づく販路開拓や業務効率化による収益力向上を支援【拡充】採択枠を2割増(H29:150件 → H30:180件)
地域農業を支える元気な中小稲作農家支援事業費【新規】 15,121千円
セーフティネット住宅供給促進事業費【新規】 12,154千円
教職員働き方改革推進事業費【新規】 59,995千円
  1. スクール・サポート・スタッフの配置 48,879千円
  2. 部活動指導員の配置 11,116千円
学びのセーフティネットの充実
  • 高校生への修学支援の充実
    • 授業料の負担軽減のための「就学支援金」の給付
    • 授業料以外の教育費負担軽減のための「奨学のための給付金」の一部対象者の支給額の拡充【拡充】
    • 発達障がいに関する通級指導担当教員の専門性向上のための指導員の配置【新規】

継続事業

  • 正社員化促進事業奨励金176,340千円
  • リフォーム補助 678,780千円
  • 河川流下能力向上対策事業費

注意が必要な事業

  • 市町村総合交付金交付事業費 拡充
    • 市町村が活用しやすい市町村総合交付金 (雪対策総合交付金の組み入れ等)の交付
  • 探究型学習の進捗状況・成果を評価検証する「山形県学力等調査」の実施(4月実施)
  • 子どもベンチャーマインド育成事業費【新規】4,800千円
  • 国民健康保険特別会計繰出金
  • 介護給付費-238,537千円減額
  • 生活保護費 -106,908 千円減額
  • ダム整備事業費 ~ 最上小国川流水型ダム ~
  • 図書館整備事業費・大規模改修工事の実施
  • 県立高等学校校舎整備等事業費 
    • 寒河江工業高等学校改築にかかるPFI手法の導入検討【新規】 等
  • 地域総合整備資金貸付事業費 5,000,000千円
    • 地域振興に資する民間事業者の活動を支援するための長期貸付
  • 収入未済金縮減指導費
  • 風力発電
  • 庄内高校再編・中高一貫校
  • 帰国者