2019年2月定例会と2019年度県当初予算についての見解
2019年3月14日
日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関 徹
2019年度山形県当初予算案等が全会一致で可決・成立しました。共産党県議団は当初予算を含むすべての議案に賛成しました。全員賛成の場合は討論を行うことができないルールには問題を感じるところですが、会派として県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明します。
1)安倍政権が昨年末に閣議決定した地方財政計画では、地方が自由に使えるお金「一般財源」の総額は昨年度より増額となったとされますが、2019年度山形県一般会計予算では「一般財源総額」が昨年度当初より大幅に減額となりました。その結果、県の貯金にあたる財政調整基金について過去10年で最大の取り崩し額を余儀なくされました。要因は、国が想定するほど県税収入が伸びず、国から県に入る実質的な地方交付税(臨財債を含む)も減らされるためです。
県内の景気は、国の主張とは裏腹に深刻な状況となっています。消費税の引き上げをできる環境にはなく、増税は中止すべきです。税金はアベノミクスで儲けた大企業や富裕層に負担させることが求められています。
2)当初予算には、これまで県議団として要望してきた様々な施策が盛り込まれました。灯油購入助成事業は、冬期間の積雪が多く、県内全域が「豪雪地帯」に指定される県民生活の実情にかなったものです。県立高校へのエアコン設置は、昨年の猛暑を受け、新日本婦人の会をはじめ県民から強い要望が寄せられていたもので、特別支援学校は2019年度までに、県立高校は2020年から3年計画で全校に設置の方針が示されたことは重要です。
昨年8月の豪雨災害を受け、新規事業として、河川流下能力向上緊急対策事業がもりこまれました。昨年9月定例会で、関県議は、県の河川管理延長が全国12位と長いこと、河川維持管理に関する国からの補助金が三位一体改革でなくなり、堆積土砂撤去をする予算が少なくなっていたことなど国の施策が問われていることを指摘しました。その後、国は後年度交付税措置される起債を行える枠組みを作り、県はこの制度を利用し、堆積土砂や支障木の除去を行うことになりました。事業は国の限界の中で県民のいのちと暮らしを守る施策として評価できます。
県は、これまで正社員化・所得向上・最低賃金の引き上げを推進する独自施策を進めてきましたが、来年度はさらに正社員化・最低賃金の引き上げ施策の拡充を盛り込みました。知事の「国に対して強く意見を言いながら県としてできる限りのことをする」という姿勢、全国一律最低賃金実現を国に要望するという態度は、全国的にも先駆的な意義があると考えます。
私立高等学校等授業料の軽減事業で世帯収入約350~450万円の世帯に月額2,500円を上乗せ拡充します。
他にも、新規事業として予算の規模はそれほど大きくないものの、学校の校外活動等での医療的ケア児の対応、東北初の受動喫煙対策条例に基づく予算化、依存症回復支援事業、子どもの居場所づくりに取り組む団体に対する運営経費支援、小中学校へのスクール・サポート・スタッフの配置、中学校への部活動指導員の配置拡充などが盛り込まれました。全国4番目に制定された種子条例に基づく予算も確保されています。
住宅リフォーム助成制度、学童保育利用料軽減支援、中小企業トータルサポート事業なども継続されました。
以上のことから、吉村県政の「県民の命と暮らしを守る」姿勢に沿った前向きの施策を評価し、総合的に判断して2019年度山形県一般会計予算に賛成しました。
3)一方で、当初予算には、懸念される事業も含まれます。子育て分野では、国の方針に合わせ幼児教育・保育の無償化が予算化されました。無償化の財源は消費税増税分を充てるとしています。しかし、保育料は既に所得に応じた傾斜配分をされているため、低所得層では増税による実質負担増となり、3~5歳児のおかず代は公費負担から実費徴収(一部世帯を除く)になります。
教育分野では、過度な競争と教員の多忙化を助長しかねない県単独の山形県学力等調査の実施、中学の受験競争・受験対策の過熱化をもたらしかねない田川地区の中高一貫校推進(鶴岡市)を初め様々な意見や反対の声が強い田川地区高校の再編整備などです。
介護では自立支援型地域ケア促進でサービスの打ち切りが促進される恐れがあります。
有機エレクトロニクス関連事業や慶應義塾大学先端生命科学研究所支援事業は、産業振興と雇用拡大の見通しについて明確にしていく必要があります。
奥羽・羽越新幹線整備事業では、並行在来線の存廃、建設費用とその負担、環境への影響、既存交通インフラとの関係など様々な課題について、県民に情報を提供しながら検討する必要があります。他に最上小国川流水型ダムは問題です。
4)2018年度から国民健康保険の財政が都道府県化されました。2月定例会では、国保2018年度補正予算が提案され、23億円ある国保基金のうち19億円を取りくずすこととなりました。制度開始初年度から赤字となる異常事態です。県は、国が70~74歳の国保加入者の算定方法を年度途中で変更したこと、熱中症などで医療費が見込みよりも増えたためと説明します。基金で取り崩した赤字分は、今後(2020年度分として)、市町村が県に納める納付金に上乗せされ、県民負担となります。制度設計を作った国の責任は重大です。赤字を県民負担とせず国で負担すべきです。このことは、渡辺県議が2月22日に厚生環境常任委員会で指摘しました。
国保2019年度予算は、2018年度当初と比べ医療費が増え、県民負担である市町村納付金が36億円増える見込みとなりました。高すぎる国民健康保険税を「協会けんぽ」並みに引き下げるためにも、2014年に全国知事会が国に求めたように1兆円の公費負担が求められます。
5)条例等について、山形県公文書等の管理に関する条例が提案されました。国のモリカケ問題に端を発して、公文書の在り方が問われるなか、県も国の公文書管理法にそった条例制定となりました。条例では「公文書」の定義について「職員が組織的に用いるもの」とされています。メールやメモはどうなるのかなど今後の課題が残る形となりました。共産党県議団は、2017年に野党6党が「抜け穴」をふさぐため「職員が組織的に用いるもの」の要件削除などを記載した公文書管理法改正案を提出したことを念頭に、恣意的な運用がなされないようチェック機能を果たしていきます。
地方自治法の改定により会計年度職員制度を導入する条例が提案されました。今や行政は非常勤の人なしには、仕事が進まないという状況になっています。条例の制定で、新たに手当の支給が可能となりますが、常勤職員が非常勤に置き換えされないかなどの監視が必要です。
今年10月の消費税増税に対応する使用料手数料条例の改定が提案されました。私たちは消費税増税に反対ですが、国から自治体への圧力が強まる中、増税への対応が含まれものであっても、一律に反対しないという態度をとりました。引き続き、消費税増税中止を求めていくものです。
6)請願について、共産党県議団が紹介議員となった山形県消費税廃止各界連絡会(会長遠藤強)からの「消費税増税中止を求める意見書」請願は、自民・公明・県政(国民・立民・社民・無)・無所属が否決し、共産党県議団のみの賛成でした。
反対討論で関県議は「1月に行われた朝日新聞の世論調査では、増税賛成が33%に対し、反対が59%」などと指摘しました。増税中止は県民の強い要望であり、その実現のために引き続き全力を尽くします。
7)日本共産党県議団は、県民からアンケートで寄せられた「年金が上がらず生活が苦しい」「年金下がって介護保険料・国保も上がった」「子育てにお金がかかりすぎ」「保育士さん給料上げて増やして」「学校の先生増やして」「安倍政権で農家はつぶされる」「改憲はごめんだ」「再稼働とんでもない」「消費税10%やめろ、複数税率するなら上げるのやめろ」などの声に応えて、消費税10%ストップ、国保税引き下げ、子ども医療費無料化、学校給食の無償化、教員の増員、家族農業支援、中小企業支援と一体に全国一律最低賃金を求め、安倍政権による県民生活破壊から、吉村県政が「県民の命と暮らしを守る」防波堤として引き続き発展していくことを目指し、政策提言とチェック機能の役割を果たすために全力を挙げる決意です。