2020年 新型コロナウィルス対応に関する申し入れ ~戦後最悪の危機から、県民の命と暮らしを守る緊急要望~

2020年4月22日

山形県知事 吉村美栄子 様

日本共産党山形県委員会
委員長 本間 和也
日本共産党山形県議団
団 長 渡辺ゆり子
関 徹

はじめに

 新型コロナウィルス対応に昼夜を分かたず精励されていることに心より敬意を表します。
 感染者が県内でも日々増加し、県民生活への影響の深刻化と県民の不安が広がり、切実な要望が寄せられています。
 自粛要請による、観光客、歓送迎会・花見、各種イベント等の激減で、観光、飲食店、文化関係、フリーランス等々がかつてない営業の危機に見舞われています。
 障害者施設では「イベントの売り上げが入らず今後が不安」と、影響が広がり始めています。フリーランス、非正規雇用労働者は更に深刻です。
 政府が3月25日から始めた新たな生活福祉資金制度(市町村社協窓口)に4月2日までで170件程度の相談が寄せられています。
 業者からは「銀行に借りに行くと前の借金のことを持ち出されて借りれないのでは」「固定費の直接支援を」との声があがっています。コロナ禍を乗り越えるためにも既往債務の借り換えや条件変更、リース代や社会保険料を含む固定費への直接支援は欠かせないものとなっています。
 農業でも「米の納入先が無くなった。大口は激減。一俵千円は下がる。」「東京の学校休校で給食に納入している米の取引が500万円キャンセル。」「一本百円位のアルストロメリアが、3円から5円になって、出荷するほど赤字。転換を検討」、和牛肥育農家は「餌代も捻出できない」、と悲痛な声が寄せられ、漁業者は、「観光、飲食の需要が無くなって、タイもひらめも単価が3分の2に落ちた」等々、本県の基幹産業への深刻な影響が生まれています。
 県内の医療関係者からは、マスク、グローブ、ガウン、フェイスシールドまたはアイシールド、消毒用アルコールなど医療資機材の支援を求める声が大きく広がり、福祉施設などからも同様の強い要望があります。「業者から『翌月の仕入れは不透明』と言われた」、「マスクは1人1日1枚のみ」(総合病院)「マスクが50枚、県から届いたが、職員が8人いて、1週間程度しか持たない」(開業医)などです。
 感染症対策の重要な役割をしめる保健所は全国で30年間にほぼ半数近く削減されましたが、県でも平成 11 年度に8保健所から4保健所体制に統廃合されました。県に所属する常勤保健師数は、全国で下から三番目(令和元年度 「保健師活動領域調査」)に少なく、人員の早急な拡充が求められます。
 学童、通所介護施設、障害者施設などの福祉施設、病院などでは、感染を恐れた「利用控え」で利用料が入らない事、補助金の算定に影響して運営費が減ることなどの不安が生まれています。介護関係施設、障害者施設では既に休んでいるところも生まれています。
 学童保育では、県内で学校休校に伴い、少ない人員で朝早い時間から遅い時間まで開業を迫られ、職員は大きな負担を強いられ、疲労困憊しています。東根市では、臨時休校を延長しましたが、午前中、学校で子どもたちを預かることで、職員は非常に助けられています。
 子どもたちは春休みの宿題を既に終えて「何を勉強すればいいのかわからない」と声が出るなど、学ぶ権利をどう守るかが大きな課題となっています。
 医療・介護・福祉の職場では、慢性化した人手不足の上に、感染予防対策強化で新たな業務が発生し、「有給が取りづらい」「休めない」の声がひろがっています。子どもがいる職員は学校休校で、お弁当などをつくる家事など、様々な負担が重なっています。
 外出自粛要請によってDV(ドメスティックバイオレンス)や子どもの虐待が増える懸念があると同時に、シングルマザー家庭や、非正規労働者、若年女性など、解雇やシフト削減に直面すると一気に生活困窮に陥るという、日本社会に広く残されているジェンダー差別が、深刻な矛盾となって表れる危険があります。コロナ対策にジェンダーの視点をつらぬくことが求められています。
 また学生はキャンパスに入れず、アルバイトもなくなり、「学費を納められるか不安」との声が上がり、帰省もできず、アパートにこもることを「要請」され、その対策も欠かせません。
 そうしたなかで、4月7日、政府は「新型コロナウィルス感染症緊急経済対策」と補正予算を公表しました。その後「減収の世帯に30万円」が「一人10万円」に変更されたことは、国民世論の反映といえますが、すべての日本在住者にスピーディに支給されなくてはなりません。
 同時に支給水準は極めて不十分であり、外出自粛・休業要請などによって直接・間接の損失を受けている、すべての個人と事業者に対して、生活と営業が持ちこたえられる補償を実施することが引き続き求められます。
 政府の「緊急経済対策」の中で個人や中小企業に対する現金給付に「線引き」が行われ、対象が狭くなり多くの個人と事業者が切り捨てられる事態が予想されます。不公正が起きないよう現金給付は1回に限らず、継続的な補償とすることが強く求められます。
 また、対策ではそもそも、消費税減税が欠落しています。今日の経済危機の土台は消費税10%増税であり、そこに新型コロナの打撃が襲ってきたことを踏まえた対策が必要です。
 「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)」は、「次の段階としての官民挙げた経済の回復」に位置付けられていますが、県内経済は幾多の事業者・県民が、新型コロナウィルスを乗り越えられるかの瀬戸際に立たされており、今困っている業者・県民に重点を置いた内容にすべきです。  
 政府の取り組みは諸外国に比べて極めて見劣りする水準であり、直接・間接の損失を受けている、すべての個人と事業者に対して、生活と営業が持ちこたえられる補償を、スピーディーに実施することが求められます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大という戦後最悪の危機を乗りこえ、一刻も早い収束をはかるには国と県、県民の一致団結した取り組みが欠かせません。日本共産党は多くのみなさんと協力して、ともに全力をつくす決意です。
 これらをふまえ、以下の項目を要望します。国に対する働きかけとともに、県の補正予算案の編成と臨時議会の開催による速やかな実現を求めます。

1、外出自粛、休業要請などによって、直接・間接の損失を受けている、すべての個人と事業者に対して、生活と営業が持ちこたえられる補償をスピーディに

(1)一人10万円の給付金の支給

①「一人10万円」の緊急対策が速やかに実施され、1回に限らず継続的に実施するよう国に強く求めること。

(2)生活と事業を支えるための継続的補償と支援を

① 雇用保険加入者か否かにかかわらない通常の賃金、収入の8割の補償を行うよう国に求めること。労働者については雇用調整助成金を賃金の8割(上限月額30万円)までひきあげ、個人事業者・フリーランスなどは全額を国が補償すること。中小業者については「持続化給付金」の対象を拡大するとともに、家賃、リース代などの固定費に対しても直接給付を行うようにすること。
② 自粛要請の直接的な影響、間接的な影響全体に対する補償措置を国に求めることと同時に、県が市町村と協力してできる限りの独自の補償措置を講ずること。
③ 個人や中小企業に対する現金給付に不公正が生じないよう国に求めること。
④ 「県新型コロナウイルス感染症に係る危機対策本部」において、県制度融資・生活福祉資金・県母子父子寡夫福祉資金・県高等学校奨学金等の県貸付金の相談・貸付、解雇など被害の状況を把握すること。介護施設・障害者施設の閉鎖状況、施設別(市町村学校、妊婦)などマスクなどの資材供給状況を把握すること。
⑤ 「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(仮称)」は、損失補償や生活支援に活用すること。間接的に影響する業種も対象とし、国に増額を求めること。
⑥ 労働者が自宅待機となった場合でも給与を保障すること。雇用・処遇等、労働者の権利侵害が発生しないよう啓発を進めること。
⑦ 国民健康保険税・介護保険料の減免をはじめ、税・社会保険料の減免、消費税の延納などを関係方面に働きかけるなど実現をめざすこと。
⑧ 生活福祉資金の貸し付けを早めるため人員体制の強化をはかること。
⑨ 生活保護の支給決定については、自動車保有の弾力的運用などを求めた令和2年4月7日付「新型コロナウイルス感染防止等のための生活保護業務等における対応について」に基づいて迅速に支給決定を行うこと。
⑩ 日本政策金融公庫で実施している実質無利子無担保の制度と同様の制度を県制度融資で創設すること。既往借入金の返済猶予などの条件変更、借り換えを柔軟に行えるようにし、既往債務を理由に貸し渋りを行わないようにすること。
⑪ 農林水産物の消費を支えるために、学校給食、病院給食などでの活用を促進すること、キャンセルの場合の補償を十分におこなうこと。市町村へも同様の措置を呼びかけること。
⑫ 花きの贈答をはじめ需要の拡大にむけた支援を行い、県庁各課の需用費で購入し、市町村でも同様の措置の呼びかけを検討すること。
⑬ 県産和牛の消費拡大に向けた具体的な方策を強めること。

2、医療崩壊を止めるために、医療現場への本格的財政支援をはじめとした全面的な支援、検査体制を抜本的に改善・強化を

(1)医療機関への財政的補償と、本格的財政支援を柱に地域医療全体を支える支援をすすめる

① 「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」の中身を医療機関全体に対する緊急的な財政的補償になるように強く国に求めること。
② 感染症対策の強化のため、医療機関にマスク、グローブ、ガウン、フェイスシールド・アイシールド、消毒用アルコールへなど医療資機材の大幅な追加支援を行うことを国に求めること。やむを得ない場合の再利用の基準を徹底すること。代替え品の製造・製作を進めること。
③ 医療資機材の供給体制の強化を国に求め、提供見込みを公表しながら、医療・福祉施設等に供給することを国に求めること。
④ 県民需要に対しマスクがいきわたるような供給体制の強化を国に求めること。
⑤ 保健所削減路線を抜本的に転換して保健師の早急な増員を行うこと。
⑥ 病床の削減、病院の統廃合を進める「県地域医療構想」の推進を中止すること。国に医療費削減政策の転換を求めること。
⑦ ワクチン開発支援を国家的事業に位置付け、抜本的な取り組みになるよう求めること。

(2)PCR検査体制の強化、患者受け入れ態勢の構築を

① PCR検査の迅速な促進のために医師の判断があれば「相談センター」を通さなくとも検査ができる仕組みにあらため、PCR検査センターの設置や全国各地で導入を検討しているようなドライブスルー検査などの導入を検討すること。
② 濃厚接触者の検査対象範囲を十分に拡げること。庄内での実施体制の構築など、実施件数の更なる拡大をはかること。
③ 抗体検査の導入を検討すること。
④ 院内感染防止の観点から、感染者の入院はできる限り集約すること。
⑤ コロナ対応病床及び、その関係で発生するその他の疾病の受け入れのための病床の確保とその損失補填、医師会・開業医の協力などの負担への補償など、必要な支援をおこなうこと。
⑥ 市単位など利用しやすい区域内に発熱者外来を設置すること。医療機関の経費を負担し、減収は補填すること。
⑦ 軽症者などを受け入れる施設を(人員の配置とあわせて)早急に手配すること。
⑧ 医療従事者(等、不可欠の仕事にあたっている家庭)の児童の休校中の学校での受け入れを図ること。
⑨ 医療従事者・感染者・濃厚接触者等に、偏見や差別が発生しないよう、啓発を進めること。

3、介護・障害者など社会保障の体制を守り、ジェンダーの視点で対策をすすめる

(1)介護・福祉施設での感染防止、事業所の受けている損失と負担の補償に万全の対策を

① 介護労働者も、利用者も感染の疑いがある場合は、直ちに医療機関と相談し、検査を行い、安心して介護を続けられるようにすること。
② 感染者や濃厚接触者への訪問介護等に関する介護報酬や、訪問サービスを含む新型コロナウイルスに対応した事業所の従事者への特別手当を創設するよう国に求めること。
③ 介護事業所の感染対策への必要経費を補償し、感染防止に最善をつくすこと。
④ 不足しているマスク、防護服、消毒液などを、病院と同等に優先的に供給すること。
⑤ 介護施設や障害者施設で「利用控え」が生じ、閉鎖となったとしても、労働者の給与を保障し、施設を倒産させることのないように減収分の全額補償ができるように万全をつくすこと。
⑥ 介護施設・障害者施設の施設別閉鎖状況など、事業の状況の把握にもとづいた職員体制確保、感染防止資材の状況把握に基づく供給など、維持・存続を支援すること。
⑦ 在宅看護・介護、デイサービスの感染症対策の具体的規準や対応事例を提示すること。施設等が万が一閉鎖となった場合の対応を事前に計画すること。
⑧ 障害者施設についても、介護事業と同様の補償と支援をすすめること。

(2)DV・子どもの虐待への相談体制と緊急避難先確保をはじめコロナ対策でもジェンダーの視点を重視する

① DVや虐待に対する相談窓口やワンストップ支援センターなどの相談・支援体制を緊急に拡充すること。子供を虐待から守るため教育と児童相談所の連携の強化を行うこと。
② 女性が多いパート、派遣などの非正規労働者の不当な解雇・雇止めをやめさせるため、県としての努力を強めるとともに、労働行政の監視と指導を強めるよう関係機関に働きかけること。

4、学童保育、保育園への財政援助、学校の休校措置等にかかわる対策、大学生への援助等について

① 学童保育の運営費増とともに、減収の補填、人員体制の拡充を図ること。子どもたちを学校で午前中から受け入れ、学童の負担軽減に努めること。学校が学童保育と連携し、教職員の派遣、学校施設の開放等の支援に力をつくすこと。
② 学校で児童・生徒と家庭への状況把握を不断におこない、保護者との対話に努めること。かつてない新しい事態のもとでの支援の在り方について深く検討し、特別の対応を進めること。県学力テストは中止すること。
③ 保育登園自粛要請で過度な自粛を保護者に求めないようにすること。自粛し、家庭で保育する保護者の相談、訪問などを行うこと。
④ 小学校休業等対応助成金の日額換算(8,330円)について、大幅な拡充を国に求めること。
⑤ 休校中の県立学校で、医療・介護・消防・警察等、不可欠の仕事に当たっている家庭の児童を受け入れること。障害児、その他、希望する家庭の児童を受け入れること。給食を提供すること。市町村にも要請すること。心身の健康保持と学習支援のために、登校日の設定、家庭訪問など安全を確保しながら推進すること。
⑥ 山形県立保健医療大学、山形県立米沢栄養大学、山形県立米沢女子短期大学、山形県立産業技術短期大学校、山形県立農業大学校の授業料等の入学金・授業料等の減免を、令和2年3月24日文科省高等教育長「令和2年度における大学等の授業の開始等について(通知)」において、「新型コロナウイルス感染症の影響等により家計が急変した場合には、「生計維持者が 震災,火災,風水害等に被災した場合」に類するものとして取り扱い」との観点で対応を行うこと。
⑦ 学生アルバイトによる収入減も支援対象として8割を補償し、休校や立ち入り禁止期間中の学費(授業料)は国が全額補填して返還するなどの支援や、この期間の奨学金の返済の猶予を国に求めること。
⑧ 感染症対策を考える上でも、多人数単学級の解消、少人数学級編制の充実を行うこと。
⑨ 庁舎内の県の会議等は、「三密回避」など、感染防止対策を県民の見本となるよう徹底すること。

5、消費税5%への減税にふみきる

① 消費税5%減税を国に強く求めること。
② その財源はコロナ終息後に、大企業や大金持ちに応分の負担を求めるなど、応能負担を原則とした税制の見直しをすすめて確保するという立場で世論を喚起すること。